【BLACK−IOLITE】〜ブラック・アイオライト

「だから僕は、何かを書き続けている」

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2009-01-07 [ Wed ]
4、フォアドの巣

エンレノーテの砂漠を二日進み、三日目になった。いい加減砂と岩しかない暑苦しい世界が鬱陶しくなったルヴァリエは、早く砂漠を抜けないかと地平線にまで視線を向けていた。
「まだ砂漠は抜けないよ」
とリオが何度説明しても、彼は気晴らしだと言って目を凝らし続けるのである。 しかしそのお陰で、彼はいち早く奇妙なものに気が付いた。
「おい、砂嵐みたいなものが見えるぞ」
程なくして、リオにもその砂を巻き上げる竜巻が見えてきた。
「多分東に向かっていってるから、こっちは安全だよ。風も吹いていないし」
そうリオが判断したので、二人はそのまま歩き続けた。 ところがその砂嵐は、幾ら待っても遠ざからない。寧ろ段々大きくなっている様にルヴァリエには思えた。
「やっぱり近づいてきてないか?あれが見えなくなるまで少し逃げた方が……」
「確かに、そうかも知れない」
リオもそれは認めざるを得なかった。初めはわからなかったが、どんどん速く接近してきているのはもはや間違いない。
二人は向きを変えて、砂嵐から逃れるように歩いていった。
「それにしても、大きな砂嵐だな」
ルヴァリエがやれやれと呟く。
「もしかして、エンレノーテの亡霊の仕業だったりして」
リオのこの一言で、彼は蒼白してしまったわけだが。 ところが彼を一層苦しめたのは、砂嵐が不自然に進路をずれて彼等を追ってきたことだった。
「曲がったよな?あいつ、今……」
「変だ。どうして急にそんなに動くのか……」
その様子にリオまで首を傾げた時、不意に二人の背後で地面の砂が巻き上げられた。
「風か?」
しかしルヴァリエも、風ではない何かだとは感じている。ただそれが何なのかわからないだけなのだが。 それでもリオは、巻き上がる砂の量が段々多くなるのを見て叫び声をあげた。
「逃げなきゃ、ルヴァリエ!これも砂嵐だ!」
それを聞いてルヴァリエは、すぐにリオの腕を掴むとすごい勢いで走り始めた。
「なんだこれは!」
しかし新たな砂嵐は、やはり速度をあげて尚も多くの砂を巻き上げながら二人を追ってきた。
「こいつ……」
「ルヴァリエ、前!」
砂が口に入ってきて、とても不味い味がする。それでもリオは叫んだ。
――彼等の目の前に、最初の巨大な砂嵐が到着したのである。
「リオ……」
「目を覚ましたか」
ルヴァリエは驚いて起き上がった。その声はリオのものではなかった。
「あ、あんたは……?」
そう言ってから、口の中にただならぬ量の砂が入っているのに気が付き、地面に唾を吐いて顔をしかめた。
「俺はフェレナイトという。そういうお前は」
寝ていたルヴァリエのすぐ側に座っていた男が言った。ボロボロの衣服はともかく、整った青い眼の美貌を黒髪が被っている様は、おそらく貴婦人が放っておかないに違いない。
「ルヴァリエ……。あんたは誰だ?」
何とかそう言い返すと、男は少し考えてから答えた。
「通りすがりの傭兵だ」
「傭兵だって?」
彼は頷いた。
「砂漠の向こうのゼデスヘルトという町に向かっていたんだが、ノームが暴走するのが見えてな。まぁ関わらないのが一番とはいえ、お前達が見えたので来てしまったわけだ」
「ノームって、地霊のこと?」
またフェレナイトは頷いた。
「どうして暴走なんか……」
「側にフォアドがいたのだろう。お前達、本当に何も知らずに砂漠に入ったようだな」
「リオだってそんなこと言ってなかったし――」
その時、ルヴァリエはようやくとんでもないことに気が付いた。
「リオは何処だ!?あいつは……」
やれやれとフェレナイトは首を振った。
「だから、ノームに捕まってフォアドの巣に連れていかれたんだろう。早く救出せねば殺されてしまうぞ」
少し離れたところに、地下へ続く洞窟があった。昼間とはいえ中は真っ暗だし、奇妙な疳高い音も響いている。
「不気味だな……」
「怖いのか」
びくびく辺りを見回しながら歩くルヴァリエを一瞥したフェレナイトが、からかいながら言った。それを聞いたルヴァリエは歯を食いしばり、懸命に進んでいく。 フェレナイトは松明を灯りに付けていたが、開けた場所にでるとその奥を慎重に調べた。
「次はもっと広い。そこにフォアドがいそうだ」
此処に来るまでに、フォアドが何なのかはルヴァリエも聞いていた。巨大な胴体に骨格が浮き出た二つの翼、さらにナイフのような爪と剣のような尾を持つドラゴンに近い生き物だという。
「ドラゴンの親戚にワイバーンというのがいるが、フォアドはその小型だと思えばいい。ただし一部のノームを手下につけているだけ質は悪いが」
フェレナイトはそう言っていた。 彼は灯りを消したが、奥から薄明かりが漏れていて足下を照らした。二人はそっと中を覗いた。
「リオだ」
「あれか……」
砂塗れでどろどろの服のまま、リオは隅の方で横たわっていた。フォアドはすぐに獲物に手はつけないので、気を失っているだけだろう。肝心のフォアドは、フェレナイトより背の高いものが一頭いて、のしのしと落ち着きなく広い巣の中を歩きまわっていた。
「ではルヴァリエ、俺がフォアドの気を引くから、その間に連れを救出しろ」

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